AIコーディングエージェントの分担運用に向けた検証記録の第3回である。
第1回で「司令塔=Claude/管理=Antigravity/作業=Codex」という3層の役割分担体制を設計し、第2回では管理レイヤーに位置づけた「Antigravity」を実環境へ導入し、初期設定と日本語化までを完了させた。今回はその続きとして、第2回の末尾で次回課題に挙げた「日常的なタスク管理をAntigravityへ実際に投入する」段階に着手し、日次運用ルーティンを実機で再現できるかを実測データとして記録する。
今回の検証範囲は「あらかじめ用意した日次運用の指示書を管理レイヤーに読み込ませ、『今日のタスクは?』という問い合わせに対して当日の作業候補を構造化して出力させるまで」に限定する。タスク処理そのものの精度・速度といった定量評価は、運用の初回である今回は対象としない。
1. 投入したもの:日次運用ルーティンを「指示書」として与える
今回投入したのは、単発のプロンプトではなく、日次運用の手順そのものを記述した指示書一式である。
具体的には、運用の大原則をまとめたルールファイル、日次運用の手順書、そして作品ごとの現在地を記録した公開ステータス台帳・セッションログ・日報といった「正本ファイル群」を、対象プロジェクトのワークスペース内に配置した上で、管理レイヤーのエージェントに読み込ませる構成である。
恒常的に適用したい指示は、Antigravityの設定(Settings → Customizations → Rules)に登録できる。
ここには「Global(全体)」と「Workspace(作業フォルダ単位)」の2スコープがあり、Workspaceスコープに登録すれば、そのプロジェクトを開くたびに毎回同じ指示をプロンプトで貼り直す必要がなくなる。
なお登録時の注意点として、対象のプロジェクトフォルダを実際に開いた状態で操作する必要がある。別のフォルダを開いたままWorkspaceルールを登録しようとすると、意図したプロジェクトに紐づかず空振りになる挙動を実測で確認した。
2. 実測手順:起動から「今日のタスク」出力まで
指示書を与えた状態で、管理レイヤーのエージェントが日次ルーティンをどこまで自律的に再現できるかを、以下の手順で実施した。再現可能なプロセスとして記録する。
- 正本ファイル群の読み込み
起動後、まず引き継ぎに指定した正本ファイル群(ルール・手順書・公開ステータス台帳・直近のセッションログ・日報)を順に読み込ませる。エージェントは読了後、「引き継ぎと必要なファイルの読み込みが完了し、準備ができた」旨を報告した。 - 現在地の把握
台帳とログをもとに、直近で公開済みの記事、下書き(draft)状態で公開判断待ちの記事、保留中の項目を整理させる。前セッションの申し送り時点の状態を、作業単位で再構成できた。 - 運用ルールの遵守表明
報告は日本語で行う、記事は「記事名+サイト名」で提示する(IDのみの指定は行わない)、一次情報のみで構成し未確認事項は「※要確認」と明記する、公開・課金・不可逆の操作は判断を上位に上げる——といった運用ルールを、作業開始前に自ら列挙・確認した。 - 「今日のタスク」の構造化出力
「今日のタスクは?」という問い合わせに対し、当日(土曜)の曜日担当と、公開判断待ち・確認待ちの保留項目を、いずれも「記事名+サイト名」の形式で一覧化して日本語で出力した。指示書に明記した「IDでなく記事名で提示する」というルールも反映されていた。
3. Review-drivenモードが機能した実例(承認ゲート)
第2回で、動作モードに「Review-driven development(実行前にレビューを求める)」を採用したことを記録した。今回の運用では、その承認ゲートが日常操作の中で実際に機能する場面を確認できた。
運用手順の第0段階として、作業ディレクトリへの書き込み可否を確認するテスト(一時ファイルを作成し即座に削除するコマンド)を実行しようとした際、エージェントは即時実行せず、「このコマンドをターミナルで実行してよいか」を問う許可ダイアログ(Allow/Deny)を表示した。人間が実行内容を確認してから承認する、というReview-drivenの設計どおりの挙動である。破壊的変更や意図しないコマンド実行を実行前に差し止められる状態が、日次運用でも維持されていることを実測で確認できた。
4. 判明した仕様:日本語化の適用範囲には境界がある
運用の中で、第2回で完了した日本語化の「適用範囲」に境界があることが判明した。前述の実行許可ダイアログは、日本語化を済ませた環境であっても英語表示のままだった。
整理すると、VS Codeベースの言語パックによってメニューや設定画面といったIDE標準のUIは日本語化されるが、エージェント固有のUI(実行許可ダイアログなど)は英語のまま残るという切り分けである(※公式のローカライズ対応範囲は要確認)。
一方で、エージェントの応答テキスト自体は、指示によって日本語で返させることができた。英語のまま出力された報告も、「日本語で」と指示すれば日本語に、「訳して」と指示すれば内容の和訳を返す。
運用上の含意は明確である。承認ゲートの文言が英語で表示される以上、開発に不慣れな担当者が単独で運用する場合には、ダイアログ内容を都度確認できる翻訳サポートを併走させる設計が現実的である。今回はその翻訳役を司令塔レイヤー(Claude)が担い、英語ダイアログの意味を随時補完した。
5. 今回の到達点と次回の検証計画
本実測における完了ステータスと未計測領域は以下の通りである。
- 完了
日次運用ルーティン(正本ファイル群の読み込み → 現在地の把握 → 運用ルールの遵守表明 → 「今日のタスク」の構造化出力)を、管理レイヤーのエージェント上で実機再現。移行チェックリストにおける日次運用の基本ステップに相当する範囲を通過した。 - 未計測
タスク解釈の精度、処理速度、複数プロジェクトを横断する際のコンテキスト維持の安定性、トークン消費の効率。運用の初回であるため、これらの定量評価は今回は行わない。
現時点で確認できたのは「あらかじめ与えた運用手順を読み込み、当日の作業候補を規定の形式で提示するところまでは、管理レイヤーが自律的に再現できる」という一点である。提示されたタスク候補を採用して実作業を回し、所要時間ややり直し回数を測定する段階には、まだ入っていない。したがってツールの有用性や速度に関する定量的評価は、次回以降の実測に委ねる。
次回は、今回再現できた日次ルーティンの上に実作業を一件乗せ、記事作成タスクを「指示 → 生成 → 検収 → 下書き入稿」まで管理レイヤー主導で流し、その所要時間とやり直し回数を計測する予定である。
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