ここは、夢の街。現実で積み重ねた出来事が、この街ではひとつの現象になって現れます。夢の街 Storyscape 第12話をお届けします。
第12話「名前よりも確かな重さ」
街の片隅にある古い工房には、いつの間にか膨大な数の資材が積み上がっていた。それは、かつて誰かが作りかけ、霧の中に置き去りにした名前のない欠片たち。わんこが手を触れると、それらは不確かなノイズのように揺らぎ、どれが新しく、どれが古いものかすら判別がつかなかった。
「名前だけを見ても、この子たちの本当の姿は分からないわ」 コトノがそう言って、天秤を差し出す。二人は山積みの欠片を一つずつ手に取り、その「重さ」を計り始めた。ラベルが違っても、全く同じ重さと響きを持つものがある。見かけに惑わされず、その本質を一つずつ照らし合わせていく。
魂の重さが同じものは、そっと一つに重ねていく。そうして余分なノイズを削ぎ落としていくたび、止まっていた工房の呼吸が少しずつ深くなった。「カチリ」。不意に、床の石畳が確かな音を立てて定まった。整理され、本来の居場所を見つけた資材たちが、街の新しい基盤となって光を放ち始めたのだ。
山のようなガラクタは、いつの間にか整然とした資材の棚へと姿を変えていた。霧が晴れた工房の窓から、わんこは遠くの景色を見つめる。街は今、かつてないほど軽やかに、次の呼吸を待っていた。
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