【実測#06】AIエージェントの会話ルールを”設定”に落とす:質問・確認の日本語化を恒久ルール化した手順

毎朝の業務整理やタスク確認をAIエージェントに任せる運用は、非常に強力な省力化手法である。しかし、AIツールとのやり取りを継続していると、出力されるテキストに英語や専門用語がそのまま混ざり込み、人間側の確認コストが地味に増大するという課題に突き当たる。

「日本語で回答して」とその場で口頭指示を出せば一時的には解決する。しかし、セッションが切り替わるたびに記憶がリセットされ、再び英語や専門用語交じりの出力へ戻ってしまう。本記事では、2026年8月31日朝の運用実体験に基づき、AIエージェント(Antigravity)の会話ルールを単なる「口頭指示」から「設定ファイル(ルール)」へ落とし込み、恒久的に日本語化を定着させた手順と構造を解説する。

1. きっかけ:毎朝のAI運用で、英語と専門用語が混ざっていた

当プロジェクトでは、毎朝のタスク管理をAIエージェントであるAntigravityに任せる運用を行っている。「今日のタスクは?」と問いかけるだけで、当日の担当媒体や保留中のタスクを抽出し、整理して報告させる仕組みだ。

運用の流れ自体はスムーズであったが、エージェントから返ってくる出力テキストにおいて、以下のような英語や専門用語がそのまま混ざり込むケースが多発していた。

  • draft (下書き状態の記事やファイル)
  • OK (正常処理、または公開中の状態)
  • cron (定期実行スクリプトや自動処理)
  • Doc (Googleドキュメントなどの文書)
  • pending (保留・未着手のタスク)

エンジニアや開発者同士のやり取りであれば文脈で理解できるが、毎朝のタスク確認においてこれらの英単語が並ぶと、一瞬視読性が落ちる。直感的な把握を妨げる要因となっていたため、オーナーより以下の2段階の改善フィードバックが出された。

  1. 「出力内の専門用語や英単語を日本語で表記してほしい」
  2. 「エージェントから人間へ投げかけられる”質問・確認”の文章についても、すべて日本語化するルールを追加したい」

2. その場の言い換えでは、なぜ再発するのか

フィードバックを受けた際、最も手軽な対応は「draftじゃなくて下書きと書いて」「質問も日本語にして」とチャット上でその都度指示(口頭指示)することだ。実際にそのセッション内であれば、エージェントは即座に指示に従い、綺麗な日本語で応答してくれる。

しかし、この「都度の口頭指示」には決定的な構造上の問題がある。多くのLLMやAIエージェントは、セッションが新しくなる(またはコンテキストがリセットされる)と、前回の会話の中で与えられた一時的な口頭指示を忘れてしまう点だ。

翌朝、再び「今日のタスクは?」と呼び出すと、エージェントはデフォルトの振る舞いに戻り、再び「draftが1件あります」「cronの設定を確認してください」といった英単語交じりの出力を返してくる。結局、人間側が毎朝「日本語で書いて」と指示を打ち直すハメになり、根本的な解決にならない。

会話ルールを定着させるためには、その場のプロンプト指示ではなく、エージェントが起動した瞬間に自動的に読み込まれる「設定(ルールファイル)」として固定化・恒久化するアプローチが不可欠となる。

3. まず「用語の日本語対訳」を定義する

ルールを設定ファイルへ落とし込む前段階として、エージェントが迷わずに変換できるよう、曖昧さのない「用語の日本語マッピング(対訳表)」を明確に定義した。

今回、運用現場で定義した主要用語の対訳は以下の通りである。

元の英語・専門用語日本語マッピング(定着ルール)適用文脈・補足
draft下書き記事や原稿のステータス表現
publish公開済みブログ・メディアの公開状態
OK正常 / 公開中システム状態は「正常」、記事状態は「公開中」
cron定期実行 / 自動処理自動化スクリプト・スケジュール処理
DocドキュメントGoogle Docsや仕様書ファイル
pending保留中着手前・一時停止中のタスクステータス

このように、「何という単語が出たら、どの日本語に置き換えるか」を明確に対応づけることで、エージェント側での自己判断による表記ブレを防ぐことができる。

4. 都度指示ではなく”設定”に落とす(AGENTS.md/Workspace常設ルール)

定義した日本語マッピングおよび「質問・確認の日本語化」を、毎セッションで自動適用させるため、リポジトリ共通ルールとワークスペース常設ルールという構造上のレイヤーに落とし込んだ。

具体的な組み込み先は以下の3点である。

① AGENTS.md(エージェント共通の絶対ルール)

プロジェクト全体の最上位階層に位置する AGENTS.md に対し、「エージェントからの質問・確認・説明・状態報告はすべて日本語で行うこと」を絶対ルールとして明記した。これにより、どのエージェントが呼び出された場合でも基本方針が全適用される。

② _プロジェクトルール.md(会話ルールの明記)

会話のトーン&マナーややり取りのプロトコルを定めている _プロジェクトルール.md に、前述の「用語の日本語マッピング表」と会話日本語化の運用ルールを追記した。

③ .agents/rules/japanese_communication.md(Workspace常設ルールの新設)

エージェント起動時に常時自動読み込みされるワークスペース専用ルールとして、.agents/rules/japanese_communication.md を新設した。会話開始時に強制適用されるため、ユーザーが個別のプロンプトで「日本語で話して」と毎回指示する必要が完全に消滅する。

設定ファイル群にルールを組み込んだことで、次回以降のセッション立ち上げ時点から自動的に日本語化ルールが適用され、再発防止の仕組みが完了した。

5. 実機で見えた「ルール化+実測確認」の必要性

会話ルールの設定化を進める中で、実機運用ならではの重要な観察が得られた。当プロジェクトでは、単一のAIにすべてを任せるのではなく、役割分担を行ったAIチーム体制を構築している。

  • Antigravity:全体の段取り・進行管理・ルール適用
  • Gemini:記事原稿の執筆(文章生成)
  • Claude:成果物の検収・整形・入稿・正本化

このように役割を分担して運用する中で、ツールごとの得手不得手や挙動の特性が見えてきた。

例えば、Geminiは高度なテキスト生成能力を持つ一方で、生成した原稿をGoogleドライブ等の外部ストレージへ直接「ファイル保存」する機能を備えていない(チャット出力のみ)。そのため、Geminiが執筆した本文テキストを、ファイル保存機能を持つ別エージェント(Claude)が受け取り、GoogleドキュメントやローカルSSD(正本)へファイル化・保存するというバトンタッチ運用が必要となる。

さらに実稼働の中で、「ファイルを保存しました」と画面上で報告してきたツールがあったものの、実際にストレージ内を実測確認したところ、ファイルが未保存であったという事象が観察された。AIエージェントの自己報告(テキスト出力)は、必ずしも実際のシステム状態と一致しない場合があることを意味している。

この観察から得られた重要な結論は以下の2点だ。

  1. ルール/設定への落とし込み:都度の口頭指示に頼らず、ルールファイルへ恒久化して振る舞いを固定すること。
  2. 実測確認の徹底:エージェントの「完了しました」という自己報告を鵜呑みにせず、実際にファイルが生成・保存されているかを人間や検収用エージェント(Claude)が実測で確認すること。

品質と安定性は、この「設定によるルール化」と「現場での実測確認」の二重構造によって初めて担保される。

6. まとめ:会話ルールは”育てて定着させる”もの

AIエージェントとの協働において、最初から100%完璧な応答を求めることは難しく、使っていく中で英語の混在や表記ブレといった「不具合・違和感」が必ず露出する。

大切なのは、違和感を覚えたときにその場の口頭指示で済ませるのではなく、「なぜその表記になったのか」を構造的に捉え、日本語マッピングの定義と設定ファイル(AGENTS.md や .agents/rules/)への追記を行っていくプロセスだ。会話ルールは一度書いて終わりではなく、実運用を通して”育てて定着させる”仕組みとして捉える必要がある。

なお、今回の「質問・確認の日本語化恒久化」による具体的な作業時間短縮率やエラー削減率などの定量効果については、運用初回のため現時点では未計測である。今後、毎朝の運用データを蓄積する中で、どの程度の定量的インパクトが得られたかを検証していく予定だ。

WALLEVEの各種活動やAI活用の検証記録、その他の取り組みについては、案内部署・総合窓口(indexページ)にて随時更新・発信を行っている。AI運用の自動化や設定化の事例に関心がある方は、ぜひ窓口ページも併せて参照されたい。

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